フィリピンで怖い病気の1つが狂犬病です。
2020年6月、フィリピンに渡航歴のある豊橋在住の男性が、狂犬病が原因で死亡しました。フィリピンに行ったときに犬にかまれたという事実もあったということです。
来日後に発症し、5月から入院するも、その後死亡が確認されました。残念ながら、狂犬病は死亡率100%です。
日本ではほとんど聞かなくなった「狂犬病」ですが、フィリピンではまだまだ症例の多い病気です。
日本人は狂犬病に対する理解がないため、たとえ犬にかまれても放置しがち。しかし、死につながることもある怖い病気ですので、しっかりと理解しておきましょう。実際、世界では毎年、少なくとも5万9000人が狂犬病で死亡しているといわれています。
本記事では、フィリピンや日本の狂犬病事情やもし噛まれたらどうすればいいのかについて説明します。
フィリピン・日本の狂犬病事情
フィリピンのDOHが発表した最新のデータ(古いですが)によると、2017年の発症数は219件と報告されています(参照)。
2010年代は、大体150~300件程度の数で推移しているようです。
フィリピンでは、デング熱の感染者数が、毎年10万人とか20万人とか言われているので、それと比べると低い数値でしょう。
しかし、狂犬病の怖いところは、発症してしまえば、致死率100%ということです。
フィリピンのDOHのホームページには、以下のように記載されています。
狂犬病は、発症してしまえば致死率100%の怖い感染症です。ただし、正しくケアすれば、100%対処できる病気です。
しかし、日本をはじめとした多くの国において、狂犬病の正しい対処法を知らないのが事実。
たとえば日本の場合、1957年以降、国内の感染は確認されていません。死亡者も犬の感染者もゼロです。
しかしながら、海外を旅行中に犬にかまれ、対処をせずに帰国。そして帰国後に体調を崩し狂犬病と診断され死亡、という事例が数件発生しています。
今回のニュースにある、フィリピンに渡航歴のある男性が狂犬病で死亡も、同じ流れと考えてよいでしょう。
狂犬病に対する理解がないのは、日本だけではありません。たとえば2019年、とても悲しい事件が話題となりました。
ノルウェー人女性が狂犬病で死亡、旅先のフィリピンで助けた子犬にかまれる(参照)
行き場のない迷い子犬を家に連れ帰り、遊んでいたわけです。
他の子犬がそうするように、子犬もじゃれながら、その女性の指をかみました。
帰国後に体調を崩し病院に行くと、狂犬病であることが判明。その後、命を引き取りました。
ノルウェーでは、人間が狂犬病に感染した例は1815年が最後といわれていますので、狂犬病のことを知らない人もいるのではないでしょうか。
このようなシチュエーション、犬好きの方であれば、大いにありえるかと思います。そのため、もしもの場合に備え、狂犬病の理解を深めておく必要があります。
狂犬病とはいったいどんな病気なの?
狂犬病は、犬や猫などが噛んだり引っかいたりした後に発症する感染症です。基本的には、犬や猫の唾液が人間の皮膚に侵入することが原因で起こります。
アジアやアフリカなどでいまだに確認されており、フィリピン以外の国でも気を付ける必要があります。
動物→人間への感染が主で、人間→人間に感染することはありません。
発症してしまえば致死率100%という怖い病気です。しかし、正しい処置をすることで100%予防可能。
潜伏期は通常1~3カ月程度で長い場合には1年以上の場合もあります。(日本の獣医師会情報では、最短1週間~で発症とも報告されています)
・前駆期;発熱、食欲不振、咬傷部位の痛みや掻痒感
・急性神経症状期;不安感、恐水及び恐風症状、興奮性、麻痺、幻覚、精神錯乱などの神経症状
・昏睡期;昏睡(呼吸障害によりほぼ100%が死亡)
潜伏期に病院で正しい処置を受けることで、狂犬病の発症を予防することができます。
日本はどうして狂犬病がゼロになったのか?
日本はどうして狂犬病が0になったのでしょうか。
これにはさまざまな理由が関係していますが、主な理由として以下の3つが挙げられます。
・狂犬病予防注射の義務化
・政府機関による野良犬、野良猫の保護と必要に応じた殺処分
・衛生面の向上
フィリピンも同じように、2022年までに狂犬病発症ゼロを目指しています。そのための目標として2020年の狂犬病発症ゼロを目指していましたが、残念ながら達成できませんでした。最新の人数は公表されていませんが、撲滅は未来の目標となりそうです。
フィリピンでは狂犬病の撲滅はかなり難しいことかと思っています。その理由を説明します。
フィリピンで狂犬病の撲滅が難しい理由
フィリピンでは、狂犬病の撲滅を達成するには難しい理由がいくつかあります。
宗教的事情
キリスト教では、処刑は基本的に認められていません。フィリピンには、町中に犬や猫が歩き回っていますが、このような動物を保護し、場合によっては殺処分、ということは不可能です。しかし、野良犬、野良猫は自由に子どもを産みますので、数はまったく減りません。このような野良犬、野良猫は、狂犬病を持っている可能性大です。
経済的事情
動物好きで知られるフィリピン人。どの家庭でも犬や猫を飼っています。1匹や2匹は当たり前。オンラインの英語の先生の中には、10匹もいるよ、とうれしそうに教えてくれる方もいました。日本では、動物を飼うのは、基本的には経済的にゆとりがある家庭が多いと思いますが、フィリピンではたとえお金にゆとりがなくても、友達感覚でとりあえず一緒に暮らし、エサをあげます。特に子犬、子猫の場合はそうですね。そして大きくなったらどこかに置いてくる、ということをします。
1匹や2匹の飼い犬であれば、動物病院に行き、狂犬病のワクチン注射を事前に打てば基本的には問題ありません。しかし、経済的にゆとりがない家庭が大量の犬を飼うため、もちろん予防注射は打ちません。つまり、家で飼われている犬であっても狂犬病をもっている可能性はあるのです。そして場合によっては、その犬や猫が野に放たれます。
医療的事情
フィリピンでは、公立の病院であれば、犬にかまれた後の予防注射を無料もしくは低料金でうってくれます。しかし、フィリピンの公立病院は数が限られていることに加え、時間がかかります。そのため、まぁ大丈夫だろうという理由で放置します。その結果、予防すれば100%で命を救えるはずなのに、残念ながら死亡者がでるという現状があるのです。
※特に現在はコロナのせいで、病院に行きたがらない人が多いでしょう。
これらのことを考えると、フィリピンで狂犬病がなくなるのは、まだまだ先のことになりそうです。むしろ無理な目標なんではないかと思ってしまいます。がんばれ!フィリピン!
フィリピンで狂犬病を防ぐためにすべきこと
では、フィリピンで狂犬病を防ぐためにすべきことを説明します。
むやみに近づかない
まず第一に、犬や猫に近づかないこと。フィリピン人は、動物愛好家が多いため、犬や猫と積極的にコミュニケーションを取ろうとしますが、そこは真似をしないほうがいいでしょう。
もし、飼い犬と遊ぶ場合は、狂犬病のワクチンをうったかどうかを確認することをお勧めします。わからない、とか、うっていない犬や猫とは、フィリピンにおいて触らないことが第一です。
犬や猫を飼う場合は必ずワクチン接種を
フィリピンで犬を飼う方は多いと思います。かわいいだけでなく、泥棒から家を守る相棒としても犬は人気がありますからね。その場合は、かならず動物病院で予防接種を受けるようにしましょう。
噛まれたらすぐに洗い消毒、その後病院に
こちらから近づかないようにしていても、何らかの理由で噛まれることもあるでしょう。その場合には傷口をすぐに洗い流し、最低限の消毒を。その後、数日以内に病院に行き、狂犬病ワクチンの接種を依頼してください。
噛まれた=狂犬病に感染、というわけではありませんが、可能性はあります。命には代えられませんので、信頼できる病院に行き、狂犬病ワクチンの接種を依頼しましょう。1日や2日で発症することはありませんので、急いでいく必要はありませんが、できる限り早く行くのがベターです。また、日本でも予防注射が受けられますので、帰国予定がある人は、日本で受けるのも選択肢の1つです。ただ、発症してしまえば致死率100%ですので、適切な処置が必要です。詳しくは医療情報になりますので、信頼できる情報を頼ってください。(例:大阪府獣医師会)
終わりに
今回は、日本人にはあまりなじみのない感染症「狂犬病」とフィリピン事情について紹介しました。
たとえ気を付けていても、犬にかまれてしまうことはありえます。そのため、狂犬病に対する正しい理解と、その場合の対処法をしっかりと理解しておく必要があります。
もしフィリピンや旅行先で犬にかまれた場合は、落ち着いて、正しい対処をするようにしてくださいね♪